毎年この時期になるとなんとなく心が忙しなく、これから始まる年度末・年度初めの怒涛のような忙しさに少し湯鬱になる。
寒い寒い冬が終わり、桜が咲き、一年でも最もワクワクさせられる季節であるはずなのに、いつからか春が来るとこんな気持ちになっている自分がいる。
今年は先週の日曜日、2022年2月27日が冬と春の分かれ目だったのだろう。
その前日は海に出ていたのだが最初は風速3mぐらいの快適な風から1時間もしないうちに7〜10mに吹き上がった。
翌日は10〜16mの暴風が吹いて、当然ながら海には出なかったのだがその日、またはその前日を境に冬と春の空気が入れ替わったのだろう。
それ以降は朝夕は寒いのだが、刺すような冬の寒さは身を潜め、同じ寒さでも何か優しさを感じる、明るい、希望を持たせるような寒さに変わっていた。
「ああ、冬が終わったんだな。ああ、あの春が来るんだな」
心の中でそう呟いている自分がいた。
それでも桜が少しづつ咲き始め、やがて満開になり、儚く美しく散ってゆく様は、何回見ても飽きず、日本人に生まれてよかった思わせられるものがある。
桜を見ることに日本人はなんであんなに必死になるのだろう。
桜が咲く頃はちょうど年度の終わり、初めであり、別れと出会いが錯綜する季節であり、新生活が始まる季節でもある。
日本人は皆、その頃の思い出が、自分が本当に幼少の頃からのその時期の思い出が心の中に積み重なっており、桜がそのそこはかとない思い出を引き出し、郷愁を誘うのだろう。
桜と一緒に思い出や希望を味わっているのだろう。
この年になって桜を見ると「あと何回、桜を見ることができるのだろう」とふと考える。
かように桜の季節になると色々なことを考えてしまうのだが、今年は目の前の桜に相対し、今、ここの桜を味わいつくし、想い尽くすことに臨もうと思っている。