家の固定電話を解約した。
家族全員が携帯電話を持ったからだ。
昔は電話と言ったら固定電話しかなかった。
彼女と連絡を取るのも、お家の電話に掛けるしかなかった。
そういう電話はえてして彼女のお父さんが出るものだった。
だから彼女のお家に電話をかけるのは心を正して緊張して掛けたものだった。
怪しいものではありません、という事をわかってもらうために、礼儀正しく、爽やかに取り次ぎを頼むものだった。
今では携帯電話でダイレクトだ。
LINEなどはもはや会話も要らない。
新入社員が電話を取るのが苦手なのも無理はない。
今やお家の固定電話には宣伝やアンケートなど、ロクな電話しか掛かってこない。
自動音声に耳を傾ける人は一体どれぐらいいるのだろう。
それでも家から固定電話を無くすというのは、何か一つの時代が終わったという、そこはかとない寂しさを感じるものだった。
以上